意外に思われることかもしれませんが、タオルには原産国表記の義務はありません。
今治タオルの場合、日本の今治で作っていることが一般に浸透していますので、不要かもしれませんが、そもそもタオルのみならず織物、繊維製品の原産国表記についての明確なルールと罰則がないのが現状です。原産国表記は、消費者に誤解を与える不当な表示を防ぐことで、消費者を守るのが目的です。日本国内では「景表法(不当景品類及び不当表示防止法)」において不当表示を禁じています。
飲食料品については、JAS法の対象として義務になっています。ただし生鮮食品を念頭においたものであり、加工食品についてはグレー、もしくは表示義務が無いとされているものもあります。また、アパレル業界については日本アパレル・ファッション産業協会を中心に原産国表示マニュアルを策定し徹底を図っています。これはアパレル業界では海外ブランドの取り扱いが多く、原産国の証明を厳しくしないと模倣品の流通が容易になってしまう側面もあるためです。お客様を守るための業界自体の防衛手段でもありますね。
このように業界それぞれ、あるいは企業単独で、原産国表記を定めているケースがあり、国内で統一されたルールは「景表法」「商標法(不当表示の禁止)」くらいしかありません。そのため、各業界で自主ルールがまとめられているのです。
これが輸出入となると「関税法」や相手国の「国内法」の出番となります。原産国虚偽や誤認の恐れがあると判断された場合、是正を促されるか、輸入物の差し戻しとなります。FTAやEPAといった二国間や多国間で関税を減免する為の協定を結んでいる場合に、原産品であることを正しく証明する必要もあるため、厳しく規制されるのです。
このように一般的な規定としては原産国偽装を禁止するようになっているのですが、工業製品においては、加工工程で複数の国をまたぐことも多々ある話です。アパレルならば、最終仕上げで少し縫製をしただけで原産国にできるなら、99%の工程を安い途上国で済ませてしまおうとするでしょう。まるでウナギの偽装ですね。そのため、どの加工をしたらどこの国の製品なのかが大事となります。衣料品については実質的変更をもたらす行為を品目ごとに定めており、例えば、製織、染色、縫製が該当します。タオルの場合は染色までを原産国とし、耳などの縫製だけでは国産とは認めないと、上記原産国表示マニュアル内で規定されています。
今治タオルの特長は「先晒し先染め」です。製織よりも先に染色しますので今治タオルは全て国産となります。しかし、一般のカラータオル、特に無地のカラータオルは後染めも多く、生産工程の多くが海外ということもあり得ます。また、このマニュアルは自主ルールでもありますので、ヘム縫製だけして国産表記していても消費者に判断する術はありません。結局のところ、消費者に誤解を与える表記を避けることが求められるという、元の話に戻ってしまうのですね。
今治の各タオルメーカーさんも、そのブランディングの中で、お客様に安心して選んでいただけるよう、顔のみえる、産地がはっきりと分かるアピールと信頼関係の構築に絶えず努力を続けているのです。
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