The three “special weave” of KOBOORIZA
第一章「making of KOBOORIZA」でご紹介したとおり、工房織座では着物の反物幅と同じ約40cmの生地を1枚ずつ生産する「着尺一列機」という低速織機を使っています。マフラーやストール製品に適した幅で織り上げるため、ほとんど縫製の必要がなく、それにより美しくて軽く、手ざわりのいい上質な製品ができあがります。
そして低速だからこそ手織りに近い自由なスタイルの表現が可能となり、平織りのような基本的な織りから複雑な織りまで様々な技術を存分に活かすことができるのですが、なかでも「たてよこよろけもじり織り」は、世界で唯一、工房織座だけの独創的な織り組織として知られています。
今回の特集「織りもの偏愛図鑑」では、そんなオリジナルな組織開発まで手がけてしまう工房織座の「織り」に対する「偏愛」について、3つの組織に着目してご紹介いたします。
1・もじり織り
工房織座ブランドマネージャー・梶さん
『工房織座の原点です』
工房織座が旧式織機でまず初めにつくったのがもじり織りなんです。私たちは当初からマフラーに必要な“軽さ”を追及していました。生地を軽くするために「糸の密度を落とす」ことは他の織り方でもできるけれど、そうすると糸が泳ぎ傷んでしまう…それを解決するために辿り着いたのが、もじり織りだったのです。ヨコ糸をタテ糸で縛り上げるこの織り方は別名「カラミ織り」とも言いますが、今治でこの織りでマフラーをつくっているのはうちだけですね。
もじり織りの特筆すべき点は、素材の良さを直で感じられるところ。
タテ糸が少なくヨコ糸が多いもじり織りは、ヨコ糸の存在感が強いのも特徴。なので、タテ糸は同じでも、ヨコ糸の素材を変えるだけでウールならウールの、麻なら麻の肌あたりの良さをしっかりと感じられます。もじり織りはシリーズも多いですが、それぞれで着け心地や見た目の雰囲気が全く違うところも魅力です。ものづくりする側も、その変化がおもしろい!
代表的な商品は「もじりジーンズ」
「もじりジーンズ(ジーンズマフラー)」は、工房織座創業当時から色も形もずっと変わらず愛され続けている定番アイテムです。まるで編み物のようなざっくりとした目のもじり織りは、空気がたっぷりと含まれた織り方なのでとっても軽やか。柔らかでなめらかな肌触りで首回りへのチクチク感もありません。ずっと巻いていると、体温でマフラー内の空気がほんわりとあたたまり、肌寒い季節は心地よく防寒できます。パサっと広げて羽織れば、夏だって快適に使えます。広げたときの透け感がまた美しいのです。肌触りも色合いも、使うほど馴染んでいくのでどんどん愛着が増していきます。
2・たてよろけもじり織り
工房織座ブランドマネージャー・梶さん
『ゆらぎ織りの弱点を解決!』
糸というのはタテ糸もヨコ糸も“まっすぐ”であることが基本。ゆらぎを加えても、糸は負荷のかからない形に戻ろうとするんです。糸の密度をギュッと詰めてしまえば、ゆらぎ模様の固定はできるかもしれないけど、マフラーはガチガチに織るものではない…。ならば、もじり織りの「ヨコ糸をタテ糸で縛り上げる」という方法にミキシングすることで、軽くて柔らかく、なおかつよろけ模様もしっかり固定することができるのでは!という発想から、たてよろけもじり織りが誕生しました。この織り方も、ヨコ糸の素材を変えることで表情がガラッと変わるんですよね〜。
こんな感じでひとつのひらめきが派生して、武田から新しいアイデアがどんどん生まれてくるので、それを全部商品化しようとしたら追いつかないぐらい(笑)でもこれからもちょっとずつ形にしていくので、どうぞお楽しみに。
代表的な商品は「ウール混ゆらぎ縞ツートンマフラー」
「ウール混ゆらぎ縞ツートンマフラー」を広げて光に透かしてみると、やわらかく浮かび上がるゆらぎ模様…なめらかな手触りなのに不思議な立体感を醸し出す「たてよろけもじり織り」は、工房織座・武田さんが考案した特別な織り方なのです。特別でありながら、毎日身に着けたくなる心地よさは、もじり織りのなめらかで肌馴染みのいい柔らかさがあるから。コンパクトにキュッと巻くのにちょうどいいボリューム感で、落ち着いた色合わせのツートンは男女問わず取り入れやすいカラーばかりです。
3・変わり織り
工房織座ブランドマネージャー・梶さん
『マフラーはまっすぐでなくてもいい』
最初はもじり織りから始まった、工房織座でのものづくり。その後だんだんと蜂巣織りや綾織りなどほかの織り方もできるようになりました。織物の世界で蜂巣織りや綾織り自体が珍しいというわけではないんですけど、もじり織り一辺倒でこれまでつくってきた私たちにとっては、他の織り方が新鮮に感じられました。だけど単に蜂巣織りだけ・綾織りだけでつくったマフラーというのはすでに世の中にたくさんあるし…自分たちでなにか形にするとしたら、もっと工夫していろんな織り方をミックスしたものがつくれるかも?と思い、出来上がったのがこの変わり織りです。
実は、いろんな織りを一枚に入れると、組織ごとの特徴で“縮むところ”と“縮まないところ”があるせいで形がいびつになってしまうんですよね。でも、工房織座で使っているのはシャトル織機だから、織り上げた生地に”耳”がない。耳がないということは、生地全体がひきつりにくいわけです。それでも多少はガタガタしてしまいますが…それもご愛嬌ということで。
私たちは、マフラーはまっすぐ・真四角でなくてもいいと思っています。正直、巻いてしまえば関係ないし、こんな変わり織りが実現できるのはシャトル織機ならでは。「まっすぐで、真四角で、整っているもの」だけでなく、織りの面白さをそのまま形にしていきたいですね。いつだって、自分たちの品質基準でいいと思うものを自信を持って世に出しています。
そうそう、糸選びも上質なものにこだわっているので、ウールでもチクチクませんよ。変わり織りシリーズは人気商品のひとつで、毎年新しいカラーを出しています。タテ糸とヨコ糸の組み合わせで、限られた色糸から新しい色の生地を生み出すことができるのも織物の強み。工房織座にはカスタマイズされた「撚糸機」もあるので、既製の糸からオリジナルの杢糸をつくることもできますからね。
織りだからこそできる表現を、私たちは変わらず探求しています。
代表的な商品は「ウールヘリンボンボーダー」
「ウールヘリンボンボーダー」には、裏と表でも色合いや風合いが異なり、巻くたびに印象が変わるおもしろさがあります。肩掛け巻きや一周巻きのようなシンプルな巻き方でも存在感を発揮してくれるので、巻き方がわからない…なんて悩みはなくなるかも。もちろん、色んな巻き方を試したい!という方には、ぜひこの変わり織りが持つ豊かな表情を引き出しながらアレンジを楽しんでいただきたい!巻き物初心者さんから上級者さんまで、ヘビロテ間違いなしのマフラーです。ウール100%なので真冬の寒さにもしっかり対応。トーンが落ち着きがちな冬の装いのワンポイントに。
しまなみ海道の終着点 美しい島々、
海と山に囲まれた町「今治」に、工房織座はあります
四国地方の北西に位置する愛媛県今治市。瀬戸内海の壮大な自然を背景に、島々をむすぶ「しまなみ海道」は、サイクリストをはじめ、国内外から多くの観光客が訪れる人気のスポットです。
また、日本一の建造量を誇る造船・海運業、国内のタオルの 5 割以上を生産する織物業など、古くからものづくりが盛んな町でもあります。
高縄山系を源流とする蒼社川の伏流水は、不純物の少ない軟水で、繊維の晒しや染めに最適。肌ざわりがやさしく、繰り返し使ってもくたびれにくい良質な織物が生まれる由縁です。
株式会社 工房織座 794 ‒ 0117 愛媛県今治市玉川町鬼原甲 55
KOBO ORIZA Co., Ltd.
55 Onibara-Kou, Tamagawa-Cho,
Imabari-Shi, Ehime 794 ‒ 0117 Japan Tel 0898-55-2564 Fax 0898-55-2584