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FÖRNE(フォルネ)は2019年にデビューした、愛媛県を拠点とする”子どもと大人が自由に楽しめる”プロダクトブランドです。

ブランドディレクターであり、すべてのアイテムの企画とデザインを手がけるのはグラフィックデザイナーの伊場麻世さん。自身の子育ての中で「あったらいいな」を形にした、インテリアにも馴染むシックなデザインや色味の知育玩具や子どものためのプロダクトを次々リリースし、その世界観やかゆいところに手が届く「なるほど!」な機能にSNSを中心にファンが広がっています。
今回は2022年にリリースされた、伊織でも贈り物に大人気のコラボシリーズの開発秘話やFÖRNEについて伊場さんに話をお伺いしました。
インタビュー・テキスト:清水淳子/撮影:森川誠治
日常の困りごとをデザインで解決
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―FÖRNEを知った時、「こんなにおしゃれでシックな子ども用品見たことない!」と思いました。まずはこのブランドを始めたきっかけを教えていただけますか。
2018年の春にフィンランドに行く機会がありました。愛媛県砥部町出身の石本藤雄さんを訪ねる旅で、石本さんは1970年にフィンランドに渡り、マリメッコ社でテキスタイルデザイナーとして活躍されたのちにアラビアという陶器メーカーで陶芸作品を作られていました。石本さんの制作の現場や街や森の雰囲気、布ものや陶芸・ガラスなど北欧のクラフトに触れることで、「もっと自由に自分発信のものづくりをしたい」という気持ちを思い起こすきっかけとなりました。
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FÖRNEは、自分自身の育児の経験を通して「あったらいいな」というものを形にしています。ブランド立ち上げ当時は小学校・幼稚園の男児の母で、最初にできた商品はブナのつみ木です。当時思っていたのが、1つのおもちゃでも複数の遊び方や楽しみ方ができると子どもが飽きずに遊んでくれるし、遊びを通して学ぶことができたり、子どもと保護者がともにコミニュケーションがとれるんじゃないかと。成長の過程で遊び方は変わってきますが、ベビーからもう少し年齢を重ねても遊べるように、カレンダーとして使えたり、数字の計算ができたり……。そんなことを考えながらつくりました。
デザインについては、自然をモチーフにしたアイコンや子どもに興味をもってもらえそうなイラストをベースに、色みを抑えてシンプルで自宅のインテリアにもすんなり馴染むこと、日々目に触れるお父さんお母さんのテンションも上がるようなものにしたいこと、そして子どもが口に入れても害がないよう、食品にも使われるウレタンの塗料でコーティングしました。

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―伊場さんのものづくりは、ご自身が創意工夫の中ですごく楽しんでいるのが伝わります。
日常の育児においての困りごとやモヤモヤはデザインで解決できることがたくさんあると思うんです。例えば子どもの毎日のTODOやスケジュール管理を子どもが徐々に自分でやってくれるようになったらいいのにな、と思い「お支度ボード」をつくりました。
実際に子育てをしているからこそ、あったらいいなと思うことを“機能”として入れ込みつつも、子どもと一緒に使うことでママの気持ちも満たされているということも大事だと考えています。
店舗スタッフからのラブコール
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―伊織とFÖRNEとの出会いについて教えていただけますか?
まだFÖRNEが立ち上がる前に、私が道後の伊織本店の2階で開催されたデザインの会に参加していたことがあり、その時に伊織ディレクターの松浦さんと個人的に出会うきっかけがありました。その際に、松浦さんから何か一緒にプロダクトができたらいいね、というお話をいただいて、タオル工場の見学に行ったり様々なプランを練っていたのですが途中になっていて。
それはそれで、まぁ仕方がないしそういう事もあるだろうと思っていたところ、FÖRNEが立ち上がり道後の伊織本店でポップアップストアをさせていただくきっかけがあったんです。FÖRNEは実店舗をもっていないので、お客様とのコミュニケーションはSNSか出店の際ぐらいなんです。様々な方に触れていただいて、お話もできていいポップアップができたな、と思っていたところ、また松浦さんからご連絡をいただいて。
松浦:伊場さん個人にお願いしていた件がコロナ禍もあり、立ち消えになっていて心苦しいなと正直思っていた部分もあったのですが、道後でのポップアップで店舗スタッフからの評判がとてもよくて。現場から「FÖRNEさんの世界観でベビーのタオル用品をつくりたい」という声が上がってきたんです。それで再度、伊場さんに「FÖRNEと伊織とでコラボ商品つくりませんか?」と、ご提案させていただきました。
―個人としての出会いを経てから再度、FÖRNEというブランドへ伊織からオファーがあったんですね。
再度お声かけいただいて、とても嬉しかったです。伊織でも子ども向けの商品はたくさんありますし、出産祝いとしてタオル製品を選ぶというのは定番でもありますよね。だからこそ、よりFÖRNEらしさは何なのか、を考えて商品に落とし込む機会をいただいたなと。
まず、絶対につくりたいと思っていたのはスタイです。必ずと言っていいほど使うベビーアイテムですので、ギフトでもらっても嬉しいし、気に入ったら自分で何枚も買いたいと思う品です。
デザインのかわいいスタイは世の中にたくさんありますが、そういった商品は吸水性や品質がイマイチだったりすることが多く、「機能もデザインも諦めたくない!」とずっと思っていました。よだれの多い子はしょっちゅう口元を拭くし、こぼれたお水やお茶をキャッチするのにも重宝します。

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デザインはとても悩みましたが、
・普段着にもお出かけ着にも似合うもの
・くるくる回って前後左右どんな角度から見てもかわいいもの
・性別を選ばないこと
・リバーシブルであること
などがポイントです。ブランドのキーカラー、チャコールグレーなどシックな色味は最初からつくりたいと思っていて、小さな柄が散りばめられている面とシンプルな面という欲張りなリバーシブルで、1枚で2パターン楽しめるデザインに。
検討を重ねて決定したスタイの形状は丸型・セーラー型の2つ。色はチャコールグレーとライトグレーで、シックにも、優しい印象にも選べるように。丸型の柄イラストは男女問わず使えるよう、bird(鳥)柄・toy(おもちゃ)柄に決定しました。
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
タオルの生地については、松浦さんはじめタオルのエキスパートたちにサポートいただきながら糸1本から選んでいきました。
柄面は肌あたりの良さや優しさ、風合いの可愛さからガーゼ生地を選びました。こだわりのセーラー型スタイは無地でつくりたかったのですが、単なる無地では寂しさを感じたため、織りで柄を表現するジャカード織りにしました。 無地部分のジャカード織のデザインはヘリンボーン、ポコポコとしたトッドのボーダー、平織など、少しずついろんな柄を混ぜて、シンプルながらもさりげない凹凸感が可愛い織り柄に仕上げました。
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―そのほかのラインナップはいかがでしょう。
タオルについて言えば、子どもが生まれてから外に持ち出すことが案外多いな、と気づきました。おくるみやベビーケットとしても使うし、もう少し成長してからは保育園・幼稚園に持って行く手拭きのタオル、また習い事のプールや体操教室など、子育て中はタオルの活躍の場が家の外であることも多々あります。手触り、吸水性はもちろん、さらにかさばらない事もポイントだと思います。
今治タオルらしい安全安心・高品質な部分とアパレル的なかわいさを持ち合わせたタオルがほしいなとずっと思っていたことが、ここで叶いました。
また、自宅用にもプレゼントとしても選びたくなる品として、ラトルをつくりました。
おもちゃなど、手にしたものをすぐに口に入れてしまう赤ちゃんが、いっぱい遊んで汚れてもお洗濯できるので、衛生面で安心。
鳥と自動車の形をした2種類の丸くてゆるいフォルムが愛らしく、ぬくもりを感じるアイテムです。ラトルの中には鈴が入っており、手に持って揺らすたびにカラカラとやさしい音が鳴るのもポイントです。
“FOR YOU”に思いを込めたものづくり
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―お客さんからの反響はいかがですか。
SNSでお客様からの声を聞くことが多いのですが
「ひと目見てこれだ!と思いました」
「安心の今治タオルで敏感肌の赤ちゃんにもピッタリ」
「シックでおしゃれなベビーアイテムを嫁と孫にプレゼントしたい」
など、ありがたい言葉をかけていただいています。子ども用プロダクトは明るくはっきりした色合いのアイテムが多いですが、もちろんそれはそれで役割や好みがあると思っていますが、FÖRNEでは商品を選ぶママも気分が上がる”かわいさ”を大切にしています。
―ちなみにFÖRNEというブランド名の由来ってなんでしょう。
“FOR YOU”という英語を並び替えた造語です。どこかに一人は私と同じように、この世界観やデザイン、この機能の商品をほしいな、と思ってくれる人がいるんじゃないか、そんなたった一人に向けて精一杯「これいいでしょ」というものづくりを続けていきたいと思っています。
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―3人目の子育て(取材当時6カ月)中の伊場さん。ベビー用品を再び使うようになって、感想はいかがですか。
スタイは本当にどの角度から見てもかわいくて、子どもの写真を撮る時も気分が上がります。うちの子はよだれが多い方なので、スタイで拭うこともよくあるし毎日取り替えるものなので、何枚もほしいなあと思います。洗えば洗うほど質感が柔らかくなり、肌ざわりが良いのもポイントですね。
FÖRNEのユーザーさんは、まず自分が使ってみて気に入ってくださり、それを知り合いへプレゼントしましたという方も多いですね。
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―SNSでFÖRNEのプロダクトを紹介している方もよく見かけます。
「ものを買ってください」というスタイルの営業をしていないので、お客さんがお客さんを呼んでくださり、とてもありがたいと思っています。SNSや公式サイトのブログを使って情報発信をしたり、商品の購入者には「FÖRNEジャーナル」というフリーペーパーをお送りして、お客さんとコミュニケーションを図りたいと思っています。
―子どもとママが一緒に遊べる・楽しめるというのがFÖRNEさんのブランドのキーになっていますね。
母が創意工夫が好きなタイプで、既製のものでも組み合わせたりつくり替えたりしながら、一緒に楽しんでくれたんです。その影響もあってか、私も子どもたちとの工作タイムは大好きで、子どもと関わりながら創作をすると、ものづくりへの意欲や刺激をたくさんもらえます。
子どもと生活をすることで、改めて季節の行事や家族ごとなど節目のイベントを大切にすることができたり、また、それを楽しむためのツールが欲しくなってつくってみたり。「こうだったらいいのになぁ」というのが強いタイプなんだと思うんです。
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―最後に伊織のファンの方へメッセージをお願いします。
今治タオルの良さ、高品質で吸水性もばっちりなことはみなさんご存知だと思うのですが、シックな色味やデザイン、少しゆるくてあたたかみのある雰囲気、ママ目線の機能など様々なベビーアイテムの中で、一つの選択肢としてFÖRNEとのコラボ商品をお選びいただけると嬉しいです。
先日、外出先で伊織×FÖRNEのスタイをした赤ちゃんをお父さんが抱いている様子を夫が見て、それがとても良い雰囲気だったそうです。男性が育児参加を積極的にする時代に、ジェンダーレスでシックな雰囲気のベビープロダクツはフィットしているな、パパが赤ちゃんを抱いているその姿もカッコいいんだろうなと思いました。男性のファッションとも相性が良いデザインなので、ご家族でコーディネートを楽しんでいただけたら嬉しいです。
(2023年4月取材)
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IORI BABY×FORNE
シリーズ
=プロフィール=
伊場 麻世(いば まよ)
7年間のデザイン会社勤務を経て、2012年よりフリーランスのグラフィックデザイナーとして活動中。現在、三児の母。母親の視点からものづくりに関心を寄せ、2019年にフォルネを立ち上げる。