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暮らしを楽しむ 人とタオル|#16 夏井いつきさん

 

#人とタオル #INTERVIEW #特集 #読み物

 

暮らし方、働き方、家族構成などによってタオルの役割も多種多様であることに注目し、さまざまなジャンルで活躍する方に「暮らしとタオル」のテーマでお話を伺う伊織の読み物企画。

第16回は愛媛県松山市在住の俳人、夏井いつきさん。俳句集団「いつき組」組長として、テレビや新聞、ラジオなどで顔を見ない日はないほど、精力的に”俳句の種まき運動”に勤しんでいます。改めて俳句のこと、そして今までメディアであまり語られることのなかった生活のこと、そして今回手にとっていただいた「伊織」のタオルについてあれこれお話を伺います。

暮らしを楽しむ 人とタオル

#016 夏井いつきさん

インタビュー・テキスト:清水淳子(ジャンボ編集室)/撮影:武智俊介(Maison photostudio)

楽しくないと俳句じゃない

―「プレバト!!」(TBS系列)や「夏井いつきのよみ旅!」(NHK)へのご出演や、ラジオ、YouTubeなど、様々なメディアで夏井さんのお顔を見る機会があり、「俳句」という言葉を聞く機会が増えたと思います。

YouTubeは4年前に始めて、現在は週1回のペースでやっています。やり始めるとなかなか辞められない。そういう人生を歩んでいます(笑)。コロナ禍では対面で句会ができない時期もありましたが、私たちの仲間である俳号・野良古(のらふる)という青年が「夏雲システム」というインターネット句会のためのシステムを作ってくれていたんです。このシステムは無料でみんなが使えるものとして運営され、とても優秀なので、対面でなくとも交流ができてよかったね、となったのですが、コロナが落ち着いた今でも、遠方にいて会えない俳句仲間たちは「夏雲システム」を利用して句会を続けています。

句会のことをあまりご存知ない方は、赤い毛氈を引いて、着物着て正座してやるものだと思ってらっしゃる方もいますが、そんなのいつ時代のこと……という話で。私たち年寄りも若者連中も、便利なものは使いながら句会を楽しんでいますよ。色んなことを考えさせられるコロナ禍ではありましたが、素晴らしいシステムが副産物的に広まった面もありました。

―短い詩にも色々ありますが、俳句の特徴はどのようなものでしょう。

俳句の特徴は、作り手にも読み手にもなれることなんです。俳人にとって詠む(俳句を作る)ことと読み解く(他者の作品に触れる)ことは車の両輪のようなもので、どちらもやることでバランスの取れた俳句の筋肉「俳筋(はいきん)力」がつくんです。

私たちが考えているのは、まずは俳句を好きになってもらうこと。リアルに楽しめる場として、句会ライブというプログラムは小学生から大人まで幅広い世代の人に楽しんでもらえるよう、新しい句会の形として全国で行なってきました。三世代、四世代で来てくださる方も多いんですよ。2時間半近く同じ時間を共有してもらったら、俳句って笑えるし、泣けるし、感動の量が半端じゃないんです。「楽しくないと俳句じゃない」というのが私たちにとって合言葉の一つなので、まずはそのような体験をできるだけ提供していく。そんな種まきを30年続けています。とにかく日本語さえ話すことができれば俳句は作れますから。

―夏井さんの言葉はいつもフラットで小難しくないと感じます。納得できるように説明してくださることで、素直に心に響きます。

私は昔、中学の国語の教員をやっていたんですね。講演会も句会ライブも「プレバト!!」もまさにそうですが、大体、「中学生に分かってもらおう」というイメージでお話をすると、大人にもちゃんと伝わるんです。とにかく言葉は相手に通じないとただの雑音なので、どうやって伝えるのが一番良い方法なのかいつも考えています。

―それは俳句にも通じることですよね。自分の俳句を読んでくれる人がどう思うか考えなければ、独りよがりになりますもんね。

俳句ってね、世界で一番大甘な評価者が自分なんです。自分はどんな気持ちで作ったか分かっているから。でも17音しかない俳句において技術が足りなかったり、思いだけが溢れちゃうと人には伝わらない代物になってしまう。「プレバト!!」の5点、10点あたりの俳句だと、日本語になっていない、何が言いたいのか分からないものも、これらが問題点なの。

ちゃんと言葉を人に伝える力を身につける、というのは俳句を使った日本語の技術教育なんです。俳句界のためだけに“俳句の種まき”をしているわけではなく、ありとあらゆる事情を抱えた人たちが自己表現として俳句が作れるようになれたらいいな、というのが私たちの思いですね。

広がる感動の輪

―俳句の世界で人の句を理解しようと思う心が生まれることは、人の話を聞こうという意識、他者理解が進むので、俳句を通して心にも作用してくるような気がします。

「俳筋(はいきん)力」が磨かれていくと、どんどん読み解く力が上手になっていくし深くなっていく。作った人の感動が読み解く人の感動になる。そして自分の俳句に対する解釈を聞いて感動する。そういった輪が広がっていくこと、それこそが俳句が「座の文芸」だと言われている、特徴の一つだと思います。

―俳句は季語を使うというルール。最初は難しく考えてしまいそうですが……。

まず、季語を知ってくださった方はアレも季語? コレも季語? と、身の回りにたくさんあることに感動してくださいます。また、俳句の世界には季語を使わない、無季の俳句もありますから、その幅広さというのも魅力ではないでしょうか。

私の師匠の俳人、黒田杏子は「季語と交信する」とよく言っていました。季語についてただ歳時記をめくって知るというのではなく、自分の五感情報でもってキャッチする、体感する。例えば紫陽花だとしたら、そこに行って雨の匂いだとか、葉の揺れ具合だとか、色とか。季語の現場にはこういった、ありとあらゆる情報があるんだ、ということを体感して初めて紫陽花という季語を知ることができます。

―ちなみにタオルは季語ではないんですか?

汗拭いは夏の季語なんですがタオルは季語ではありません。タオルは一年中あるじゃない。汗、ハンカチ、これは季語ですよ。ハンカチが夏の季語になっているのは、汗を拭くという視線で見ているから。最近の歳時記ではハンカチ、ハンケチあたりが単独で夏の季語になっているものも多いです。

―最近の……ということは、季語は時代によって変化するんでしょうか。

季語は日本文化と一心同体なんです。日本人の生活が変わっていくと、季語の生き死ににも関わってきます。私は『絶滅寸前季語辞典』『絶滅危急季語辞典』(ちくま文庫)というのを書いていますが、初版の時は「今どきステテコ履いているおっちゃんはおらんよね」というスタンスでの執筆だったのですが、文庫化の時には、若者向けのステテコが市場に蘇っていたんです。そういうことはいくらでもあります。季語というのはそれぞれの時代のインデックスでもあるというわけです。

―取材場所として使わせいただいたこの場所、「伊月庵」は句会場として、レンタルスペースとして、一般の方も利用可能な場所です。この場所を作ろうと思ったきっかけはなんでしょう。

「道後温泉まつり」のイベントで、以前、春の季節に道後界隈で吟行を行なっていました。その際になかなか句会をする場所が見つからなくて……。この場所は道後温泉からほど近く、一遍上人の生誕地、宝厳寺の参道にあるのですが、せっかく道後に来たのだから、この辺りに落ち着いて句会ができる場所があればいいな、と。


前のご住職の時から宝厳寺さんとはご縁があり、建築士の方とも出会い、あれよあれよという間に話が進み、平成30年6月に完成しました。県外から来られる俳句愛好家の方が10人程度で利用できる、ちょうどいい広さなのではないでしょうか。今、句会だけでなく大学のゼミや勉強会、婚活イベント、七五三の控え室など、当時、思いもしなかった使い方をしてくださっていて、面白いなと思っています。ちなみに、伊月庵は「第13回まつやま景観賞 きらめき大賞」を受賞しました。


タオルと言えば人生でこのシーン!

―「伊織」は以前からご存知でしたか?

道後商店街を散歩すると目に入りますし、もちろん知っていました。句会ライブのイベントで伊織の椿柄のタオルを賞品にしていて、タオルをもらった人たちが独自で発信して、いろんな人にこのタオルのことを知ってもらっているようです。

―暮らしの中でタオル使うときにこだわりはありますか?

こだわりは、ほとんどない(笑)! 触ってみて、肌触りがいいなぁ〜ぐらいです。買い物が面倒で好きではないし、生活へのこだわりは全くなくて申し訳ないのですが。

でも、タオルについてのエピソードは一つあります。最初の孫ができた時に、素敵なバスタオルをいただいたんです。それがグレーの大きなバスタオルで、その当時、私の中ではタオルといえば白いイメージだったので「グレーっておしゃれやん!」という衝撃があったんですね。生まれたばかりの孫をお風呂から出す専用のタオルに決めて、ふわふわのタオルでくるくるっと巻いて、顔だけ出したんですね。それがもう、どうしようもなく可愛くて、写真撮って俳句を作ったんです。


みにくいアヒルの子色のバスタオルに裸子

孫たちを詠んだ句集に載せたのですが、私にとってタオルと言えば人生の中でこのシーンが鮮やかに刻まれています。ちなみに、この俳句は宮崎で開催された、クラシック×俳句がテーマの「宮崎国際音楽祭2021」に出演した際に、歌手のマユミーヌさんが歌ってくれたんです。グレーのバスタオルをかけた孫の写真が大きなスクリーンに映ったら会場がどよめいて。可愛いからずっと写しておけってディレクターが言ってくれたみたいです。

―ちなみにお洗濯はご自身でされますか?

ご飯は兼光さん(会社の代表取締役でありご主人)が作ってくれるので、私は片付けとお洗濯をやります。

―洗濯やタオル収納について、自分のルールやこだわりはありますか?

ない(笑)! いつの間にかタオルが入れ替わっていたりするので、さっちゃん(兼光さんの妹)が知らないうちに雑巾にしてくれたり、片付けてくれてたりしているのだと思います。唯一あるとすれば洗濯物を「ぴーんと干す!」。それ以外はないですね。

―それでは、今回お試しいただいたタオルについて、ご感想をいただけますか。

『IORINO/やわらか』バスタオル/オレンジ

これは、私専用で1軍のバスタオルとして喜んで使っています。

―タオルの質感はふわふわ系がいいとか、しっかり拭ける系がいいとかありますか?

それは、ふわふわがいいに決まってますよ。

―人によって好みが分かれますからね。

え? そうなの!? なんで、もったいない!

―一同爆笑。

ふわふわでこそタオルでしょう。

―こだわりがないと言いながら、ありましたね。このタオルは綿100%ではなく、竹素材が37%入っているんです。ですから、ふわふわ感やしっとりした質感をキープしてくれます。

『kasumi-カスミ』 フェイスタオル/グレー

こちらは洗面台用の1軍です。朝、顔を拭いたら心置きなく、手を拭きます。毎日変えます。

―発色の美しさと柔らかさが特徴の糸(精紡交撚糸)を使用しているので、空気を含んだボリューム感がありつつ軽さもあります。洗うほどにふっくらとした手ざわりになるので、洗濯して日々、育てていくのも楽しみですね。

『tonari towel-トナリタオル』フェイスタオル/ネイビー

―『tonari towel-トナリタオル』はものづくりの過程で出てしまう質の良い端材を活用する、伊織のアップサイクルプロジェクトから生まれたタオルです。

なるほど! だから表面が波々になっているんだ。

―一度ランダムな縞柄で織り上げたタオルを染め直す、「後染め」をしています。後から染め直す際に、完全にもとの縞柄を消すのではなく、薄く残るように微調整を繰り返し、大人っぽい独特な深い縞柄を作り出しました。

今っぽい、オシャレな色ムラはそういう理由があったんですね。

『mimosa-ミモザ』ハンドタオル/ホワイト

―こちらはハンドタオルのサイズですが、普段お使いになられますか?

実は私は、外出時には手拭いを持ち歩くんです。ですから、タオルは家の中で使うことが多いのですが、孫が来た時や食卓で使うのもいいかなと思っています

『irodori-イロドリ』マフラー/アイスピンク

―季節を問わずに使える、綿100%のマフラーです。

みかん農家さんにプレゼントしてもらった帽子に、このマフラーを首に巻いて草を引くときに使いたいですね。素敵なので、草引きに使っていいのかなぁと躊躇していましたが。

―大丈夫です! しっかり汗を吸ってくれる素材で、夏の季節には平均で91%の天然UVをカットしてくれるので、ぴったりかと。肌寒い季節でも、襟元をほんのり暖かくしてくれます。吟行の際にも使ってみてください。

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実は着る物にも頓着せず「テレビで見せている和装はコスプレのようなもの」と、笑わせてくださる夏井さん。生活の中でもこだわりはなく、お力になれるかしら……と、お話しされていましたが、聞けばアレコレ出てきました。また、夏井さんの活動は、言葉を人に伝える力を身につけるための、「俳句を使った日本語の技術教育の一環」だと聞き、腑に落ちました。“俳句の種まき”は、日本語を話すことができるすべての人たち、次世代の日本人への愛あるメッセージでした。人生の酸いも甘いも全て俳句の種にして表現をすることで、気持ちが楽になったり、分かち合うことができたり。17音での心の交流は現代人にこそ必要なことではないかと思いました。

(2024年7月取材)


=プロフィール=

夏井いつき(なついいつき)

1957年愛媛県生まれ、俳人。俳句集団「いつき組」組長、俳都松山大使。全国で行う俳句の授業「句会ライブ」、「俳句甲子園」の創設に携わり、TBS系『プレバト!!』俳句コーナー出演をはじめ、多くのメディアで活躍。2024年6月発売の最新刊『五七五と出会った子供たち』(春陽堂書店)他、著書多数。

伊月庵
愛媛県松山市道後湯月町2-4 
※ご利用詳細は公式サイトにて
公式サイト https://www.natsui-company.com/


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