暮らし方、働き方、家族構成などによってタオルの役割も多種多様であることに注目し、さまざまなジャンルで活躍する方に「暮らしとタオル」のテーマでお話を伺う伊織の読み物企画。
第15回は愛媛県松山市出身で2022年2月に東京都狛江市にオープンしたセレクトショップ「STEEP GRADE SHARP CURVES」オーナー兼バイヤーの清家未来さん。かつて「伊織」で働いていた経験をもつ清家さんは今でも今治タオル産地とつながり、ショップでは愛媛の地場産品もセレクト販売しているそう。愛媛との橋渡しをしながら、東京でも緑豊かな地域に5人家族で暮らす清家さんの生活とタオルへのこだわりをお伺いしました。
暮らしを楽しむ 人とタオル
#014 清家未来さん
インタビュー・テキスト:清水淳子/撮影:森川誠治
愛媛とのつながりを形に
―愛媛県松山市出身とお伺いしました。これまでの職歴と近年の活動について教えていただけますか。
学生時代から洋服はずっと好きで、大学を卒業してから約1年半アパレルブランドでショップ店員をしていました。その後、全国展開をしているセレクトショップの就職試験に受かり上京し、3年間は販売員、その後バイヤーとして約7年働いていました。2016年末で辞めて、家族の都合で松山に帰る予定だったんです。Uターンを見越して松山で働ける場所として「伊織」へ転職しました。
―またなぜ「伊織」に。
2016年から転職活動をしていく中で、自分のキャリアを生かしつつ愛媛とのつながりを築くことができる仕事として、今治タオルが興味深いなと思うようになりました。実はセレクトショップ時代から「伊織」とは少し関わりがあり、道後オンセナート2014(※愛媛県松山市の道後温泉地区で2013年〜2014年に行われていたアートイベント)あたりから「伊織」の社長である村上さんともご縁ができました。
―「伊織」にいた時はどのような仕事をされていたのですか。
店頭に立って販売もしていましたし、前職のブラントとのコラボ商品も作っていました。営業職ではないけれども、営業的なことやOEMも。その後、退社しフリーランスとなりましたが今でもタオル作りには関わり続けています。
―「伊織」時代に培ったタオルの知識が生かされているんですね。
そうだといいんですが(笑)。コロナ禍もあり、しばらく産地には行けていなかったのですが、数年ぶりに海外ブランドの希望で今治タオルの産地へ赴くことになりました。個人的には海外でも、もっと使ってもらいたいと思うんです。実際にハイブランドからのオーダーがあったり、今治タオルの技術や品質が認められている実績もあると聞きますので。
―フリーランスとして働きつつ、2022年2月にセレクトショップ「STEEP GRADE SHARP CURVES」をオープンしました。
当初は松山に戻る予定でライフプランを考えていたのですが、現時点でその必要がなくなったこともあり、今住んでいる東京都狛江市にお店をオープンしました。
ちなみにお店は3人でやっています。僕とカレー屋とパン屋で。僕とカレー屋はパパ友で、カレー屋とパン屋は幼馴染なんです。その二人がちょうど、古着屋をやりたいと言っていて、そのタイミングで意気投合して。カレー屋とパン屋は本当に古着が大好きで、みんなで車に乗り合わせてディーラーに買い付けに行くんです。実際にはお互い忙しくなかなか実現できずにいますが、二人はいつかアメリカに買い付けに行くのが夢だと言っています。
仕事もプライベートも仲間の力を借りて
―開店日は決まっているんですか。
不定期なのですが週に2〜3回程度、営業しています。
―お店に並んでいる商品はどのようなセレクトなのですか。
アパレルは3人でセレクトしてくる古着と、オリジナルのTシャツやグッズなど。あとは、アートブックやZIN、セレクト商品や作家さんのところに足を運んで、オリジナルで作ってもらうものもあります。
例えばこのジンジャーシロップは国東半島で無農薬・無肥料、自然栽培で生姜を育てる、やーやまやさんの生姜を使ったもので、由布院で友人が営んでいるカフェ、アナハタさんが作っています。友人が持ってきてくれて実際に飲んでみて、とても美味しいし、大切な人にもおすすめしたいと思うようなものを仕入れさせていただいています。
愛媛のものでは、ひめだるまや魔除け・厄除けとして地元で親しまれている木製の宇和島の牛鬼。あと、砥部焼では中田窯さんの器や、八幡浜「Delish」のみかんジュースなども取り扱っています。
―期間限定で行われるポップアップも魅力的ですね。
今までの仕事や様々な関係性の中で培ってきたアーティストの展示をしたり、自分が気になる作家さんだったり。つながりのある中で、できるだけやっていこうと思っています。写真家・濱田晋さんは、自分がバイヤーになる以前から展覧会に足を運び、関係を築いてきた方の一人です。お店で展示をしてもらったこともありますし、昨年開催された「道後アート2023」では、クラフトミュージアムのディレクターズマーケットのディレクターとして参加したのですが、その際には濱田晋さんに愛媛に来ていただき、牛鬼の作家さん、木工作家さん、砥部焼の職人さんなど愛媛の作り手と風景を収めた作品集『Polyphony』を作りました。
―生活と仕事のバランスはいかがですか。
3人子どもがいるのですが、松山にいた時よりも近隣や地域とのつきあいが密ですね。上の子どもが小学校1年生の時に自分たちでバスケチームをつくったのですが、ボランティアでみなさんの力を借りながら、お金をかけずにやっているので、土日はほとんど子どもたちにつきっきりです。それでも楽しいですよ。
それこそ、バスケチームのパパ友にお店の塗装を手伝ってもらったり、宅配業者さんも友人が働いているところで契約させてもらったり、本当にみなさんに助けてもらいながら成り立っています。
―清家さんらしいハイセンスなもの選びには何かルールがあったりしますか。
実はあまり一貫性がないんです。お店もですが、ブランディングをやりすぎたくないっていうのがあって。強いていえば「今ハマってるもの」を大切にしている感じです。安くても、いいものはいいじゃないですか。ただ、流行っているから買うということはしないようにしています。同じものを買うにしても、モノの背景や誰から買うかということを大切にしています。
気に入ったタオルを長く使いたい
―タオルについてはいかがでしょう。個人的な好みや質感というのはありますか。
基本的にはふわふわよりも、どちらかというと硬めが好きですね。太番手で短糸で。
―なかなか、太番手というワードは出てこないですよ(笑)。ちなみに「番手」とは、タオルに使われる綿花を糸にした時の太さのことです。一般的にボリュームがあったりしっかりした拭き心地のタオルに仕上がります。
好みは「伊織」に入る前からあまり変わっていなくて、甘捻りのものは昔からちょっと苦手なんです。
―奥様はどうですか。
あんまりこだわりがないですね。家族は気にしていないと思うのですが、僕は色々と試したいタイプなので色んなところでタオルを買って使ってみます。
今回使ってみて、『IORINO/ながもち』のタオルはとてもよかったです。パイルが粒状になっていてしっかり拭ける。銀糸が入って抗菌になっているんですね。サイズも変形になっていて、使いやすいです。
―フェイスタオルと同じ幅で長さはバスタオルのサイズです。フェイスタオル派の人だと、バスタオルは大きすぎる。ご家族が多い方だとタオルの収納場所も考えないといけないので、ちょうどいいサイズだと言われる方もいらっしゃいます。
がっしりした拭き心地ですし弾力もいい。吸水性も十分だと思います。家族の中では僕だけバスタオル派なんです。成人男性でも十分な大きさですし、普段フェイスタオルに慣れている人にも、このサイズ感だと抵抗なく受け入れてもらえやすそうですね。
―ちなみに収納はどうされていますか。
収納に合わせて、手拭きとフェイスタオル、タオルのサイズや用途によって畳み分けしています。干すのも畳むのも自分がしています。
―こちらのバスタオルはどうでしょう。
とても安心感がある肉厚さなのに、フワフワした軽さもある高級感あふれるタオルだと思いました。
―オーガニックコットン糸にシルクを巻きつけた特殊糸でつくられています。
こういった柔らかい種類のタオルだと、女性が好まれる色展開が多いような気がするのですが、カラー展開が豊富で男性でも選びやすく、タオルに包まれたい方にはとてもオススメな1枚かと思います。
甘撚りな糸を使用しているので、ケアは必要だと思いますが、その分大切にできるのではないでしょうか。
こちらはループが付いているので手拭き用として使っているのですが、すごく吸水性があってよかったです。主にキッチン使いをしています。凹凸の繰り返しで、落としを使っているんですね。表面は凸面で裏側は凹面になっている。洗うたびに馴染む感じもありますし甘捻りの糸だけど凸凹になっているから、ふわふわなが苦手な人でも気にならないですね。
―ハンカチタオルは普段使われますか?
ハンカチのサイズは個人的にはあまり使うシーンがないのですが、子どもの通学用や女性にはいいかもしれませんね。手触りがとても気持ちいいです。
―質感はいかがでしょう。
『non-pile-ノンパイル』にも似た質感ですが、それよりももっとしっとり、やわらかな触り心地ですね。フェイスタオルサイズがあると、かさばらなくて旅行に持って行くにもいいなと思いました。
ちなみに『PLAIN PLAID-プレイン プレイド』。僕の持っているのは前の型なのですが、これは乾くのも早いし出張の時によく持って行っていました。『newto-ニュート』も大きなサイズがあれば嬉しいですね。
僕はタオルをボロボロになるまで使うんです。最後、どうなるのかが知りたいから。服もめちゃくちゃ着替えるんですが、洗うのが一番くたびれるじゃないですか。だから、洗いまくりたいんです。タオルは最後は雑巾にしちゃうんですけど。
―タオルはどのように洗濯していますか?
植物由来の無添加洗剤を使っています。今まではリムを持って10回パタパタしてから干す方法をやってましたが、実は最近、乾燥機を使い始めて、ふわふわになることを知りました。パイルが立つので質感が違いますし、ニオイもなくなるような気もします。
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「いいもの」の物差しは人それぞれですが、清家さんにとっては質の良さのみならず、時代背景やカルチャーなどが深く関係しているといいます。タオルに対する個人的な好みもはっきりし、知識も豊富な清家さん。気に入ったものはとことん使い倒し、ボロボロになるまで身近に置いておくというのも、モノに対する並々ならぬ興味と愛情をもっているのだと思わされました。物販や展示に収まらず、人とのつながりを大切に紡ぎながら「今」の気分を大切に、清家さんから面白い物事がこれからも起こることを期待せずにはいられません。
(2023年10月取材)
=プロフィール=
清家未来(せいけみらい)
愛媛県松山市出身。 2022年2月に東京都狛江市にオープンしたセレクトショップ「STEEP GRADE SHARP CURVES」オーナー兼バイヤー。
STEEP GRADE SHARP CURVES
東京都狛江市猪方4-5-2白栄舎ビル1F
公式サイト https://sgsc-abc.com
Instagram @steepgradesharpcurves_store