伊織の活動を通じて出会った人たちや、私たちが「会いたい」と思った方々に、タオルを持って会いに行くインタビュー企画。
第9回は、愛媛県松山市の園芸店「HINOKI and the green」のオーナー、光宗尚輝さん。
光宗さんは、約5年前に道後商店街に「伊織」最大規模の店舗、伊織道後湯之町店(現・伊織本店)がオープンする際の店舗外観の植栽にも関わったそう。
今回は、アメリカ西海岸カルチャーに影響を受け、新しい園芸店の形を模索し続ける光宗さんに仕事のこと、そして実は今までは家族だけが使っていて、ほぼ初めて使うという伊織のタオルの話をうかがいました。
暮らしを楽しむ 人とタオル
#009 光宗尚輝 HINOKI and the green オーナー
インタビュー・テキスト:清水淳子/撮影:森川誠治
憧れのサンフランシスコ
− 光宗さんはどちらのご出身ですか?
生まれは愛媛県ですが、親が転勤族だったので育ちはいろいろです。高校時代は物理と化学が全くダメで。本当は大学の建築科に行きたかったのですが、勉強で無理だろうから、いったん就職してお金を貯めて専門学校に入って学ぼうかなと。専門学校を出て、設計事務所で働いたのですが、設計というより造園・外構の方に興味が向いて、そこから植物の仕事に入っていった流れです。
− 昔から植物に興味はあったのですか?
ずっと転勤族なのでマンション暮らしなんです。一軒家に住む感覚がなかったから、庭や植物はずっと憧れの存在。母は植物が好きでしたが、引っ越しばかりだから小さい鉢物しか手元に置けないし。小学校から中学1年まで石川県に住んでいましたが、家から兼六園まで徒歩5分という立地でした。兼六園では11月から12月の中旬ごろまで、雪の重みで枝が折れないように雪吊りの作業をするんです。それを間近に見ることができたのが今思えばとても贅沢な経験ですね。
母がピアノ教師をやっていた影響もあり、幼少期からバイオリンをしていたのですが、石川には「オーケストラ・アンサンブル金沢」という日本初のプロフェッショナル室内管弦楽団があるんです。それに参加していたこともあり、コンサートはしょっちゅうあるし、美術館もあるしで、とても文化的な土地でした。
− 「HINOKI and the green」や光宗さんの雰囲気はアメリカンカルチャー寄りなので、兼六園やバイオリンの話はちょっと意外でもあります。
兼六園の近くには公園もあって、金沢大学の外国人留学生や地元の学生たちがスケボーをやっていて、そこで横乗りのカルチャーを教わりました。今、自分が好きなこと好きなもの。そういったことをかたちづくってくれたのが石川時代だったと思います。
ママス&パパスとかイーグルスとか、ビートルズはイギリスと知りませんでしたが洋楽を聴き始めると、例の如くクラシックが嫌になってくるんですよね(笑)。金沢って意外にも坂が多いんです。こじつけかもしれないけど、ちょっと親近感もあって最初に憧れた土地がサンフランシスコ。当時は図書館脇の公園でもスケボーをやっていたのですが、時間があると図書館に行って雑誌をめくるわけです。その中でアメリカの人たちが古いワーゲンとか、バスとかビートルをラフに転がしてるのを見て「かっこいいなー」と思ってね。だから、僕の嗜好ってその時からずっと変わらなくて、そのまんまなんです。
居心地の良い誰にでもひらけた園芸店へ
− 「専門学校を出てからの経歴を教えていただけますか。
建築の業界からエクステリアの会社へ転職して、松山市道後により近い祝谷という場所に店を構えましたが、そちらを閉めて2019年に現在の場所に「HINOKI and the green」をオープンしました。
外構や植栽の仕事に関わるようになって14・5年経ちます。業界自体がご年配の方が多い世界なので、まだまだ若造なのですが、僕がやっていることは今までの造園業界とはやり方、取り扱う植物も違うので同じことをしていてもダメなんですよね。園芸店は開店時に初期費用がかかるし、いきものを扱う訳ですから枯らしてしまうとそのままウン十万が消えちゃうんです。だからちゃんと知識や経験をもって始めないと大変ですし儲からない。
− 自分なりのビジョンは最初からあったのでしょうか。
ありましたね。前の会社にいた時に「グレビレア」というオーストラリア原産の植物に出会いました。展示会で見て1本だけもらってきて、それに花が咲いてハチが来て蝶が来て…葉っぱの形も面白いしとても興味をもちました。昔カリフォルニアでは、渇水があった時に庭木に水をやったら罰金という法律ができたらしいんです。当時のアメリカはイングリッシュガーデンが一般的だった時代で、それらがことごとく枯れて、「それじゃあかんやろ」となってオーストラリアや南米など南半球の植物を持ってきて育て始めたんです。渇水になって枯らしてしまうんだったら、渇水に強い植物を育てようというアメリカ人のたくましさと切り替えの速さ。
− 松山でもかつては大渇水があり、毎年夏になるとダムの水位を気にする人も多いです。
そうなった時に枯れにくい植物があってもいいんじゃないかと。ただ、今年のような暑さになると話はちょっと変わってきます。湿度がすごいんですよ。僕なんか、日中でも汗をぜんぜんかかない体になってしまって。
大きな庭をきれいに維持管理するにはお金と余裕が必要です。日本家屋に住む人も減ってきたし、ここ数年、特にコロナ禍になりみんな余裕がないじゃないですか。だから僕はこれしかできないと諦めて、コツコツただやっているだけ。今の場所は松山市内からのアクセスも車がないと難しいですし田舎ですけど、日当たりと風通しが良いしご近所づきあいが楽しいんですよ。住んでいる感覚でこの場所を借りられるのは嬉しいし、自分だけ良ければいい、という感覚ではこの土地で商売なんて難しいんです。
− 「住んでいる感覚で」というのは納得です。お店のテンションは光宗さんの趣味の世界観で完全に彩られていますよね。
嫁さんはイラストレーターで荷物が多いし、子どもに部屋を取られちゃって、家には自分の部屋がないですから、ここがほぼ部屋のようなもんです。スピーカーとターンテーブルは家に置いていたら、猫にガリガリにされちゃって。
− お客さんはどんな方が多いですか?
コロナ禍になってから若い人が増えましたが、年齢層はまちまちです。一つ言えることは、流行りもあってか男性が増えました。10年前には若い男性だけで園芸店に行くって考えられなかった。ここ数年、若いお客さんが来てくれるのは本当に面白いなと思います。その分、男性が来ても居心地のいい店にしたいという思いはより強くなりました。移転オープンの前にアメリカのガーデンショップを視察して回って、園芸店がデートスポットになっているのってかっこいいな、と思ったんですよね。あと、子どもたちが自由に振る舞えるお店にしたいので、アレコレ触るなとかいちいちダメだっていうのも面白くない。
そんな思いもあって、昨年末には道を隔てたところにあった古民家を改装してドーナツショップ「BARROW DOUGHNUTS」をつくりました。そして今年の夏には、移転後初の大改装をしています。レジカウンターとゆったりくつろげるウッドデッキを屋外に作って、より居心地のよい場所にしたいと思っています。
僕のタオルレビュー 〜永遠の定番を探して〜
− さて、そろそろタオルの話を。
伊織のタオルはもちろん以前からも知っていたし、道後店の植栽をさせていただいた時に自宅用にいくつか買わせてもらいました。家に持ち帰ったら、その肌触りの良さを気に入った妻が完全に子ども用にしちゃって。良いものからやっぱり子どもに行くじゃない。だから僕、実はまともに使わせてもらっていなくて(笑)。
− 今回は4種類、事前にお渡しして、使っていただきました。
最も日常生活で使い勝手がよいと感じたのは「non-pile」のフェイスタオルです。ループのあるタオルほどかさばらないから持ち運びにもいいし、オールシーズン使えそうだなと思います。また、このグリーン色も好みです。昔からジェントルマンを目指して、バンダナを後ろポケットに入れて必ず持ち歩きますが、実用性があるかといえば、水分の吸収はそこまでないです。例えば公園で、誰かといざベンチに座ろうっていう時に濡れていたら手持ちの何かで拭くじゃないですか。バンダナや手ぬぐいは保水性がないから、何度も拭いて絞るを繰り返さなきゃいけない。そう思うと、実用的にはこれぐらいのタオルがちょうどいいですよね。
だいたい、男性がタオルを持つっていうのは気遣いですからね。人が見て不快にならないのと、何かを拭くときに使えるのと。「non-pile」は干しやすくてバンダナみたいにアイロンを当てなくていいのが嬉しいですね。
− 「PLAIN PLAID」はいかがでしょう。
正直なところ、体を拭くにはいいのですが、風呂上がりに使ってみたらドレッドヘアに引っかかったので、特殊なヘアスタイルにはちょっと難しいかも(笑)。織りに個性があって丈夫な質感なので、奥さんや子どもが日除けに使ったり、ひざ掛けの用途にもいいと思いました。
家で使うお風呂用タオルとしてベストなのは「somaru」ですね。今までは紙みたいなペラペラな質感のタオルを使っていたので(笑)、その違いに驚いています。まず、スリムバスタオルは、一般的なバスタオルより横幅が短くて(34×120cm)サイズ感がいい。普通のバスタオルって体と髪の毛を拭いても、まだまだ乾いてる場所があるっていうか、サイズの割に使わない場所があるからもったいないけれど、これだと扱いやすいし干しやすい。デイリーユーズでこれだったら収納場所も取らないから、家のバスタオルが全部このサイズだったらいいのに、と妄想しました。
「umi」はガーゼ生地とパイルのふわふわした手触りがとても気持ちいい。その分、真夏にはちょっと暑いかもなぁと感じましたが、もう少し洗いにかけて使い心地を試してみたいです。ハンドタオル(34×35cm)のサイズ感は僕のライフスタイルの中では登場の機会を模索中という感じですが、お店での手拭きや子どもの汗拭きにはいいのかも。
− お洗濯はどうされていますか?
家の洗濯は主に妻ですが、ドーナツ屋の洗い物をコインランドリーに持って行くのは僕なので、よく洗濯します。洗いから乾燥まで1時間10分かかるんですよ。誰にも邪魔されないその時間が割と好きだったりして。今、店では安いペラペラのタオルを使ってるんですけど、すぐ臭くなって困るんですよ。
− タオルの匂いの原因は洗い流せなかった汚れに付いた菌や、濡れたままのタオルを放置していたり、洗濯槽のカビだったり、原因は様々なようですが、柔軟剤も一つの原因だそうです。
なるほど! 柔軟剤はタオルをふわふわいい匂いにしてくれると思い込んでいましたが、リンスのようにコーティングされて取れなくなっちゃうと。明日もランドリーに行くから早速実践します。
− 日常のもの選びに対するこだわりってありますか?
一つのものを長く使いたい派なんですよ。車でもブーツでも何でも。壊れても直してできるだけ長く、何なら一生使いたいけれど、それが現実的じゃないことも分かっているんです。かといってコレクションとして所有したい訳じゃない。だから、思っているほどこだわりはないんです。結局、子どもの頃に見てアレだ!って思ったものがそのまんま。例えば当時、高くて買えなかった赤ハイカットのコンバースオールスター。あれが一生かっこいいと思ってます。
あとは、自分のラッキーカラーとかラッキーナンバー。それがもの選びの6・7割。僕の場合、色はベージュと緑なんです。そうすると服にしろ何にしろ、もの選びが楽じゃないですか。それプラス「やったことがないことをやってみよう」というチャレンジ精神ですかね。
− ちなみに、これからやってみたいことはありますか。
バイクの免許を取りたかったけど、スタッフに止められちゃって(笑)。これはもうちょっと先にしようと思います。
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「non-pile」のフェイスタオルは早速、出張に持って行ったという光宗さん。
「スタッフ全員分揃えたいぐらい」と、言うほどのお気に入り。
永遠の定番を追い求めながら、挑戦を続ける光宗さんの新たな相棒として「伊織」のタオルが長く寄り添えることを願っています。
(2022年8月取材)
=プロフィール=
光宗尚輝(HINOKI and the green/ BARROW DOUGHNUTS オーナー)
愛媛県松山市生まれ。自動車整備、建築事務所、エクステリアの会社を経て独立、「HINOKI and the green」を立ち上げる。2019年4月に現在の場所へ移り、2021年12月にはドーナツ片手に緑を楽しめる「BARROW DOUGHNUTS」をオープン。
HINOKI and the green
愛媛県松山市船ケ谷町193-1
TEL: 070-5358-7927
11:00-19:00/不定休
http://www.hinokiandthegreen.com/