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数あるタオルの中で伊織のタオルを選んでくれる、あの人。
いつもお店に来てくれる、あの人。
一体どういう人なんだろう。どんな暮らしをしているんだろう。
伊織のタオルを通じて出会った、ちょっと気になる人たちに、タオルのこと、身の回りのこと、よかったら教えて! とインタビューしていくこちらの企画。
第3回は、愛媛県松山市で「発酵」をテーマにした料理教室「Kitchen studioたべものさし」を主宰し、黒麹甘酒や発酵調味料の商品ブランド「1day1spoon」も手掛けている料理家の村上友美さん。
今回は「発酵」をキーワードに、「食べること」「続けること」にまつわるお話を伺いました。
暮らしを楽しむ 人とタオル
#003 村上 友美 1day1spoon
インタビュー・テキスト:森香奈子/撮影:森川誠治
– どうして料理の道へ?
20代後半で大病を経験したんですけど、病院の先生から「原因は食生活とストレスだ」と言われて。それがきっかけで食について勉強を始めました。
実は死んでもおかしくないぐらいの病気だったのですが、こうして助かったから「なにか人の役に立つことで生きていかなきゃならない」という気持ちがそのときに強く芽生えて。私のように、病気になって辛い思いをしないためにはどうすればいいか考えたときに、まずは食生活を正すことが大切だと思ったので、それを勉強して、伝えることを仕事にしようと決心しました。
そのとき私は30歳。35歳で自分の料理教室を持とうという目標を掲げてから、短大に社会人入学して栄養士の資格を取りました。
病気をきっかけに、したいこと、やるべきことが初めてわかった
– それまで料理は一切してなかったのですか?
料理好きだった母の影響もあり、簡単な自炊はしていたけど、得意料理があるとか好きとかはなかったので、一生の仕事にしようなんてことは全く思っていなかったですね。
– 「生きる」ということに直面して初めて食を意識したんですね。
そう! それで自分のやるべきことが初めてわかったというか。 20代の頃は仕事が続かなかったコンプレックスとかもあったから、何がしたいんだろうとか、病気をきっかけに、したいこと、やるべきことがはっきりとしました。
– なんだか導かれた感じですね。「発酵」に辿り着いたのも何かきっかけがあったのですか?
健康でいるための食事を伝えるために勉強するうちに、世の中にはあまりにも色々な情報が溢れすぎていて、自分自身がなにを信じればいいか分からなくなってしまって。自分が不確かだと思っていることを誰かに伝えることはできないから、どうやったら健康とおいしさのバランスをもつ確かなものが見つかるかなと模索しているときに、発酵に辿り着きました。
本物の発酵食は原材料がとてもシンプル
麹を作る資格を取りに行ったときに、ものすごくいろんなことが腑に落ちたんです。麹は原料がとてもシンプルなんですよね。本物の発酵食は原材料がとてもシンプルなことも皆さんにおすすめしたい理由でした。
– たしかに「自分が食べているものが何か」を理解していることって安心に繋がっている気がします。
食事って本当は「おいしいから」という理由で食べたらいいと思うんだけど、情報に左右されて「もしかして体に悪いのかな」とか思いながら食べてしまうと、それがストレスの原因になっちゃう。シンプルな発酵食品は、美味しいだけでなくて安心して食べられる。体にいいだけでなく、メンタルにもすごくいいと感じたので、これを伝えたいと思いました。
甘酒やお味噌汁などは、時々じゃなくて習慣化すること、毎日摂るということがすごく大切。添加物などに過敏になりすぎないで、そういうものをきちんと流せる体になっていくことが理想なんですよね。
– 「続けることが大事」と言われると、ハードルが高いイメージがどうしても……。
プラスアルファの習慣となると私自身もしんどくなっちゃうのですが、顔を洗ったり歯磨きするのと同じように、甘酒を一杯飲んだり、お醤油を醤油麹に替えるなど、いつもの調味料を発酵調味料に置き換えたりすることで、いまの習慣に無理なく取り入れられるような提案をしていきたいと思っています。もちろん砂糖や既存の調味料を否定するのではなく、それに麹の力をプラスすることによって料理も簡単で、より美味しくなるので、お料理が苦手な人や忙しい人にこそオススメしたいアイテムです。
最近調子がいいとか、ご家族が元気になったとか
効果がでるのは個人差がありますが、気付いたら最近調子がいいとか、ご家族が元気になったとか、そういう風に感じでもらえたらいいなと思っています。
▲「1日にスプーン1杯の発酵食品を習慣化してほしい」という思いから生まれた「1day1spoon」の黒麹甘酒と発酵調味料。
– たしかにそれならいつもの習慣に取り入れやすいですね。健康と美味しさ、あと手軽さのバランスがとてもいい!
やっぱりストレスがないのが一番。仕事や家のことをしているだけでもストレスはあるのに、本来楽しみであるはずの食べることにまでストレスを感じてしまうなんて、そんな悲しいことはないから。だから私は発酵を手軽に取り入れられるように、調味料を商品化したり、料理教室を通して提案しているけれど、本当はみなさんが各々おうちで作ってもらえるようになればいいなと思っています。
良い菌がおうちに住んでくれるんじゃないかなと
麹を使ったものを自分で仕込むと、自分の体に合った発酵食品を作ることができて、それを食べると腸内環境が整えられます。ぬか床やお味噌も手作りすることで、自分や家族の味方になってくれる良い菌がおうちに住んでくれるんじゃないかなと思います。
▲「手をかけて、気にかけると、自分の味になっていくんです。」
自分が本当に何も続かない人というのもあって、一時期「習慣」についてすごく真剣に考えました。食べ物に限らず、何事も習慣化が全てだなと思って。朝起きられないとか、体がだるくて続かないとか、そういうのは自分の意思の弱さももちろんあるけど、体の状態も大きく関わっているなと気付いたんです。
それはファスティングしたときにも感じたんですけど、腸と脳はつながっていて、腸がクリアになることで脳がクリアになるというのを体感したんですね。
(ファスティングが初めての方は専門家の指導のもと行ってください。自己流は危険です。)
食事を整えておくと頭もすっきりする
みなさんにファスティングをすすめるわけではないんですけど、腸内環境がメンタルにも影響があるんだと、そのときにすごく思って。だから食事を整えておくと頭もすっきりするし、生活リズムも整う。なにかを続けることにもつながったし、習慣を変えることで人生が変わる……といったら大げさかも知れないけど、生き方もシンプルになりました。
– 食事を整えることでほかにも何か影響を受けたのでしょうか?
物の選び方もシンプルになりましたね。料理教室を始めたときは、まず道具の数が必要だからこだわりもなく揃えたりしたけれど、道具も使っていくうちに育てていくものだなと感じ始めました。
あと布地のものは、すごく自分に影響を与えるということにも気付きました。タオルなんて特にそうですけど、直接肌に触れるものが気持ちいいというだけで気分も上がるじゃないですか。タオルも昔はなんでもいいって思っていたけど、やっぱりいいものを使うと質感が違うし、使い続けているうちに心地良くなっているという感覚を、試用した伊織のタオルで感じました。
▲今回の取材にあたり、初めて伊織のタオルを使っていただきました。上から、tao(販売終了)、mori(販売終了)、very colors(IORINO/いつもの にリニューアル)、non-pile)
– (約2週間ほどお使いいただき)タオルの使用感はいかがでしたか?
初めてパイルのないタオル(non-pile)を使ったんですけど、すごく良かったです!
– ありがとうございます! non-pileは伊織が誕生した頃からあるロングセラー商品なのですが、私たちもここ最近、このタオルの他にはない機能性や利便性の高さを改めて実感していて、そのあたりをしっかり伝えていきたいなと考えているところなんです。
一見、吸水性は少ないのかなと思ったけど、使いやすいし乾くのが速い! バスタオルなので今はお風呂で使っていますが、一番初めに一回、お米を蒸すときに使ってみたらすごく良かったです。
– お料理でタオルを!?
麹をつくるときに蒸すお米って、「外硬内軟(がいこうないなん)」と言って、外を硬く・中を軟らかく蒸すんですけど、水滴がお米についちゃうとダメなんですよ。それを防ぐために(テトロン蒸し布の下に)タオルを敷いておくと直接蒸気が当たりすぎないので一枚あるといいのですが、non-pileはそれに最適でした。これは他の人の参考になるか分からないけど(笑)。
▲蒸し布(テトロン)の下にタオルを敷くことで蒸気が程よく抑えられ、お米に水滴がつくのを防げるそう。(写真:村上さん提供)
– タオルは場所によって使い分けますか?
ハンドタオル(tao ※販売終了)は主にキッチンで、フェイスタオル2枚(mori2 ※販売終了 とvery colors ※IORINO/いつもの にリニューアル)はお風呂で使いました。私、朝晩、ホットタオルをするんですけど、それにmori2 を使ったらすごく気持ちよかった!
– mori2は綿とバンブーレーヨンの2種類の糸を織り交ぜたタオルなんですけど、とくに吸放湿性に優れていて綿100%のタオルとはまた違ったしっとり感があるので、お肌に心地よく馴染むのかもしれません。
▲「バッグの中にこの大きさのタオルがあると、なんかすごい安心する。」
– (ハンカチとハンドタオルを両方持ち歩いたという村上さん)ふたつの使い分けはなんですか?
出張や大事な商談など、ちょっと緊張感がある場所とかに行ったときにも、タオルがあるとものすごい安心感があるなと感じました。いつもと違う場所に行っても、いつもの生活にあるものが持ち歩けている安心感というか。かと言ってフェイスタオルだと大きいから、カバンに入るこのサイズ(ハンドタオル:約34×35cm)はすごく良かったです。
– タオルのお手入れ・買い替えのタイミングについて教えてください。
布地にはこだわるけど、洗うのは洗濯機まかせです。でも干すときにはすごくはたくようにしています! そうすることで、乾いたときにパイルが立つと聞いて。買い替えのタイミングは手触りが気になったとき……だいたい1年ぐらいかな。くたびれたら台所のお手拭きや台拭きにして使います。
– おっしゃるとおり、干す前にしっかり振りさばいて「パイルを立てる」ことを意識していただくのと、そうでないのとでは乾いた後のふわふわ感が全く異なるので、私たちもお客様にいつもお伝えしているんですよ。
– ちなみに、どのシーンで使うタオルに一番こだわりますか?
お風呂で使うタオルですかね。直接肌に触れるので。
でもやっぱりキッチン周りも。食器の拭き上げにもタオルを使っています。吸水性がいいから、急いでいるときや大量にあるときはタオルでわーっと拭くのが速いんです。お手拭きタオルは、いつもエプロンにつけています。とにかく常に水を使っているから、お料理のときこそ吸水性は大事。
– そのほかのキッチン道具選びにも、何かこだわりはありますか?
色も機能もシンプルなものが多くなりました。「これじゃないと困る!」というようなこだわりは実はなくて。強いていうならデザイン、見てて心地いいものかな。
視界に入るものってすごく大事
視界に入るものってすごく大事なんですよ。調理道具もデザインが良かったら買ってみます。デザイン性がいいだけでなく、使いやすいものだと、それだけで気持ちが良いというか。安価なものが悪いということではなく、上質なものがあると、その空間の質も変わるんですよね。そうすると料理に対するモチベーションも変わってくるから、調理器具もタオルも、そういう意味ではわりと何でもいいってわけではないんですよね。
▲調理道具に関しては料理教室の生徒さんからも質問が多く、なるべく豊富に揃えて、実際に試してもらっているそう。ル・クルーゼやストウブ、かまどさんなど。鍋や器は、よく行くお店だと松山のSOUSOUやstrol、また旅先で購入することも。
▲使い勝手のいい蒸籠やバットなどは、同じく松山にあるBRIDGEで購入。チーズ削りは柑橘の皮を削るのにもちょうどいい。
▲京都の有次の包丁は、お母様から贈られたもの、下のGLOBALの包丁は、料理教室の生徒さんから周年祝いでいただいた贈り物だそう。それぞれ「tabemonosashi」と刻印入り。
エプロンも私にとっては料理道具のひとつかな。私、エプロンしてないと料理めちゃくちゃ下手なんですよ(笑)。仕事のときはエプロンをつけることでスイッチが入るので、ちゃんとできるようになる。それぐらい身につけるものって自分に影響を与えてくれるから、私にとってはすごく大事。
▲この日、村上さん着用していたのは新潟のvickey’72のエプロンドレス。
▲初代エプロンは友人である松山のジャム作家・朗-Rou-和田さんの手作り品。デザイン違いの4枚、今でも大切に使っているとのこと。
▲麹を作るとき用のエプロンはSa-Rahのオリジナル。「洋服を全部覆える白衣っぽい感じで、あまりシャープすぎないもの」という村上さんからのリクエストから生まれたデザイン。こちらがきっかけで「1dayフレアワンピース」として商品化され、Sa-Rahにて販売中(白は1day1spoonオリジナルカラー)
▲サンガインセンスのお香。料理中には香りが強いものを身につけないようにしているが、生徒さんやお客さんが来るときには玄関に置いて、やさしい香りでおもてなしをするそうです。
– この透明容器に入った茶色いものは(写真右)は何ですか?
これは黒麹の醤油麹です。黒麹菌は泡盛とか焼酎とかにも使われているものなんですけど、クエン酸が含まれるが特徴で、旨味だけでなくフルーティーな酸味が生まれます。黄麹にはない栄養素も含まれているので、いま注目されているんですよ。甘酒にすると美味しいですよ。黒麹菌は京都の菱六さんのものを使わせていただいています。
最近は発酵ブームもあって、麹に興味を持ってくださる方がますます増えていると感じています。麹のものすごい力と魅力をお伝えできるように頑張りたいですね。
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既存の調味料を否定するのではなく、そこに麹をプラスしたり、置き換えることによって今の食生活に自然と発酵が取り入れられること。それを美味しく続けられることで、ちゃんと自分の体が不要なものを流せるようになっていくこと。そして、健康と美味しさのバランスが取れた食習慣に変わることで、心と体、生活がすっきりと整うこと。
食事は本来誰もが楽しめるもの。発酵も決して難しいものではなく、自分に合った形で取り入れることで食べることを美味しく、楽にしてくれる。麹はそんな魔法のアイテムなのかもしれません。
不安を煽ることなく、自分が経験して、理解してきた確かな言葉で食の大切さを教えてくれた村上さん。その言葉は、やさしいお味噌汁のようにスッと心と体に染み込んできました。
https://1day1spoon.com
1day1spoon / kitchen studio たべものさし 主宰
発酵料理家・栄養士・上級麹士
村上 友美
愛媛県生まれ。大学を卒業後、テレビ局に勤務。不規則な食生活で病気になったことをきっかけに食の大切さを実感し、栄養士・栄養教諭の資格を取得。
その後、小学校の栄養士、大手料理教室勤務を経て2011年にkitchen studio たべものさしをオープン。
現在は、料理教室・発酵教室や食に関わるイベントの運営、カフェやブライダルのメニュー開発や監修、料理撮影のスタイリング等を行なっている。