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数あるタオルの中で伊織のタオルを選んでくれる、あの人。
いつもお店に来てくれる、あの人。
一体どういう人なんだろう。どんな暮らしをしているんだろう。
伊織のタオルを通じて出会った、ちょっと気になる人たちに、タオルのこと、身の回りのこと、よかったら教えて! と無邪気に聞いてしまおうという新コーナーです。
まずは、かねてより伊織とおつきあいのある方々にインタビュー。
第1回は愛媛を拠点にフリーランスでデザイン業を営んでいる大福理絵さんです。生まれ育った砥部にかまえた事務所にお邪魔し、タオルのこと・お仕事の話を伺いました。
実は数年前まで伊織のスタッフだった大福さんは、かなりのタオル通でもあります。
暮らしを楽しむ 人とタオル
#001 大福 理絵 RIE DAIFUKU DESIGN
インタビュー・テキスト:森香奈子/撮影:森川誠治/タイトル・プロフィール写真:山山写真館
– 普段どんなお仕事をされていますか?
おもにブランディングデザイン、ロゴ・グラフィック・パッケージ・web デザインなどを中心に、イラスト制作、商品や展示会などの企画を行なっています。企業やブランドの価値を可視化して世界観をつくり、お客様に伝わる、欲しいと思ってもらえるように、デザインをお手伝いしています。
学生時代から、漠然と何かつくる仕事をするんだろうなと思っていたら……
– いまの仕事にたどりついたきっかけはなんですか?
小さい頃から何か作ったり描くことが好きで。漠然と何かつくる仕事をするんだろうなと思いながら学生時代を過ごしていました。小学校では発明クラブ(という名の工作クラブ)、中学校は美術部、高校・専門学校はデザイン系の学校と、そういう道まっしぐら! いずれ独立というか、自分の事務所を持って働いているんだろうなというのは高校時代から思っていて、本格的にそのために勉強を始めたという感じです。
卒業後、22歳で入社した会社(伊織)に30代ぐらいまではいると思っていたのですが、想定どおりには生きられないですね。笑
▲フリーランスになってからデザインした伊織本店限定のワッペン。
商品説明など整理整頓するようなデザインから、少しずつタオルのデザインも手がけるように。
– 伊織ではどんなお仕事をしていましたか?
初期のデザインの仕事は、店舗限定のプチタオルと商品説明やマニュアルの制作でした。装飾的なデザインより整理整頓するようなデザインの方が向いているので、それを活かせる役割を任せていただきました。こんな若輩者に任せてくれるなんて! と少し困惑したり大変な思いもしながら、スタッフのみんなが困った時の助けになるように、お客様に快適に買い物をたのしんでもらえるように、と念入りにつくったのでとても思い入れがあります。それから少しずつ、タオルのデザインも任せてもらえるようになりました。
– タオルシリーズ「drawing」をデザインされたんですよね。
商品開発部の人が、タオル工場の倉庫から「めちゃくちゃいい素材みつけた!」とガーゼパイルの生地を持ってきて、この素材でタオルをつくりましょうということに。当時の伊織にはテキスタイルものが少なく、ガーゼ素材で、柄物で、そして伊織らしいタオルはできないかということで、まずはイメージ資料をたくさん持ち寄りました。タオルの素材に触れながらイメージをふくらませ、浮かんだ絵を水彩でササッと描いてみて、それをテキスタイルのパターンにおこして完成したのがこの「drawing」です。「水」をテーマに、各柄に「あめ」「ゆき」「なみ」と名付けました。
素材の良さからスタートしてできたタオルだけあって、質感がものすごく好きなんです。普段もっぱら“無地派”な自分でも使いたくなるような、生活に馴染む柄をと思ってデザインしたので、思い出も相まって、これからも「drawing」は好きなタオル上位確定です。
▲ガーゼ面に藍色でテキスタイルをプリントした「drawing」。
暮らしの道具選びの基準は、直感と、機能と、無駄と、愛嬌。
– タオルなど暮らしの道具を選ぶときにこだわりのテーマはありますか?
言葉でなかなか明確に言い表せないのですが、直感と、機能と、無駄と、愛嬌でしょうか。スペックを調べて身の丈にあったものを選ぶこともあれば、ただただ連れて帰りたいという欲に任せて買うこともあります。買ったものを見ていると、前からここにずっといたんじゃないかなって思うような物たちが集まっている気がします。
昔からガーゼやガーゼパイルのタオルが好き。
– 他のお気に入りタオルも教えてください。
「drawing」もそうなのですが、昔からガーゼやガーゼパイルのタオルが好きで。ほどよい柔らかさとボリューム感、乾きやすさ、あと、くしゅっとした見た目が好きなポイントです。
「伊織のソフトガーゼ」も質感がとても好きです。濡れてもべしゃっとしたイヤな感じがしないし、アウトドアで首にかけるときはごわつかず収まりがいいし、どんなシーンでもさりげなくなじんでくれるタオルな気がしています。私の生活にはもう欠かせない存在で、買い替えながら使い続けています。
▲「drawing」(一番上)と「伊織のソフトガーゼ」(上から2番目)。
あと、「ここふきん」も毎日使っていますね。実はこの抗菌防臭効果のあるふきんは店舗スタッフのアイデアから生まれたんです。大きすぎず、厚みもちょうどいい。
▲大福さんが毎日使っているという「ここふきん」。
買い替えなしで5年間使っているタオルも。
– 一番長く使っているタオルってどれですか?
「birth」です。他のタオルはさすがに長年使うとかなりくたびれた感じになるんですけど、これは持ちがいいのか、買い替えなしでずっと5年間使っています。
▲大福さんの「birth」。5年間、使い込まれてもまだまだ現役。
このタオルはタグをデザインしました。肌に触れるパイル部分にオーガニックコットンを贅沢に使用したタオルなので、タグも表に見える部分は全てオーガニック糸にしようと考えてデザインしました。ただ、コットンだとどうしても毛羽が出てくるのでなかなか細かい柄は再現が難しいんですよ。ポリエステル糸のタグだったらもっと細かくできるんですけど。なので、できる範囲内でギリギリを攻めて、なんとかカタチにしてもらいました。今思うと協力工場さんには無茶させたなと。でもいいものができました。
新品の「birth」のほわっと感と、コットンの絶妙な光沢感は格別。贈り物に間違いないタオルですね。
伊織のお店でスタッフさんのオススメを聞いて購入したり。
– 最近買い替えたタオルはありますか?
ちょうど「Waffle」を買い替えました! 今までネイビーを使っていたんですけど、なんか急に「赤可愛いな!」と思って最近使い始めました。「umi」 も使っているなあ。この間、伊織本店で「umi」を買ったときには、モチーフ刺繍を入れました。「気分転換! 」と思って。あとはスリムバスタオルの「kaze2」!
お風呂用のバスタオルとして使っている「Soft Bamboo」を買い替えに行ったら、お気に入りの白がまさかの廃盤でがっくり……傷心だったところにスタッフさんが「kaze2」をオススメしてくれて、白を購入。コンパクトなのに頼り甲斐がある吸水性とサイズ感が最高です。使うたびに、すすめてくれたスタッフさんの顔が浮かんで、「ありがとう!」って思っています。笑
– 白いバスタオルには何かこだわりが?
「お風呂周りは白!」っていうか、並べたときに全部同じ色だと「なんか落ち着く~」とはなりますね。でも実家暮らしで家族がいるので、そこまで自分好みに整えてはいません。
なので、ゼロからここに事務所をつくるときは楽しかったですね。パソコンで図面引いて「ここにはあれを置こう」とか全部シミュレーションして。内装はなるべくお金をかけず、全部いつでもコンパクトに畳めるように組み立ててつくりました。実際に置いて、「ピッタリじゃん!」となってテンション上がりました。
ゼロからつくったこの事務所での時間が、ものづくりのエネルギーに。
– この事務所で一番好きな場所はどこですか?
お昼寝用でよく使っている小部屋ですかね。窓が低い位置にあるんですけど、寝転んで見える窓からの景色がなんとなく島っぽいというか。レモン畑とライム系の柑橘が見えて、なんか瀬戸内っぽいな~って。景色の配色がさわやかなんですよね。
夜はランタンの光で過ごして、ときどきプロジェクターで映画を観たりもします。繰り返し何度も同じ作品を観たりするんですけど、本編だけでなくメイキング映像とかもやっぱ刺激になって「こんな風につくられてるのか!」と感動しては、すべてものづくりのエネルギーに繋がっています。
– 映画以外にも好きなことや、趣味はありますか?
美術館に行くのも好きです。東京や全国各地に足を運んで、作品を見て、わ~っと圧倒されて、それで「よし、がんばろう」ってなります、結局。笑
趣味も本当に、ものづくりなんですよね。他にやることないというか……デザインが好きなので、永遠にデザインしてます。
砥部の自然の中で、自然のものを見て……
– すべて自分のものづくりに通じているのですね。コロナ禍で美術館でのイベントが減ったり、出歩きにくい環境は大変ではないですか?
どちらかというと、自然のものを見た方が研ぎ澄まされる感覚が強く、専門学生時代の友人からは「研ぎ澄まされすぎるからやめとき!」と言われるぐらい。すごく厳しくて妥協ができない人間になってしまいそうだったので、ほどほどに都会に溺れようとしていました。なので、あまり息苦しさみたいなものはなくのんびりしていました。去年は砥部の自然の中で、ほぼ人にも会わない生活でしたが、わりといいものができたなと感じています。
▲最近はシルクスクリーンの製版道具を揃えて、いろいろと製作中。パーカーにプリントしたイラストは、龍泉窯の包装紙をデザインしたときに描いたもの。
▲大福さんがブランディングを手がけた、砥部焼窯元のヨシュア工房と龍泉窯がコラボしたブランド「水鹿」。
タオルから学んだ、肌に触れることと、触り心地の大切さ。
– ついつい話が脱線してしまいました。最後に大胆な質問になりますが、大福さんにとってタオルとはなんですか?
「質感の大切さを教えてくれるもの」でしょうか。
普段は思わないんですけど、ごわっとしたタオルにでくわしたときに「ああ、タオルの心地よさって大切だな」って思うんです。自分の名刺を作るときに考えたことなんですが、近年タッチパネルとか手で感覚的に操作するものが増えていて、「押す」のではなく「触る」という行為が物質の表面の触り心地をより捉えてるんじゃないかなと。肌に触れることと、触り心地の大切さは、たぶんタオルから学びました。肌触りの良いタオルは、疲れた1日の終わりに癒しを与えてくれるので、もう単純にタオルとは「癒し」でもあります。
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「質感」を大切にしている大福さん。タオルだけでなく、毎日手に取る様々なものの質感や肌触りを意識して触ってみるだけで、面白い発見があるのかもしれません。
自分の感覚にとても正直で、柔軟で、そして身の回りのエネルギーを気持ちいいほど吸収する大福さんは、まさにタオルのような人でした。
RIE DAIFUKU DESIGN 大福理絵 だいふくりえ
愛媛の松山市と砥部町を拠点に活動するデザイン事務所。ロゴデザインを中心にグラフィックデザイン、WEB デザイン、パッケージデザイン、ブランディング等を行う。
https://www.daifuku-d.com